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2025.07.30Publications大学院薬学研究科修士課程修了生の渡部哲さんの研究成果(患者記述からの症状抽出に特化した自然言語処理モデルの開発と検証)がScientific Reportsにpublishされました.

大学院薬学研究科修士課程修了生の渡部哲さんの研究成果がScientific Reportsにpublishされました.

Watabe S, Yanagisawa Y, Sayama K, Yokoyama S, Someya M, Taniguchi R, Yada S, Aramaki E, Kizaki H, Tsuchiya M, Imai S, Hori S*. A patient-centered approach to developing and validating a natural language processing model for extracting patient-reported symptoms. Sci Rep 2025 Jul 29;15(1):27652. /doi: 10.1038/s41598-025-12845-3.リンク

【論文紹介】
患者自身が語る症状(Patient-Reported Symptoms)は,医療者が気づきにくい身体的・心理的変化を可視化する重要な情報源です.しかし,これらの情報を定型的に収集・分析することは依然として困難です.本研究では,薬局薬剤師が記録したがん患者の服薬支援記録(Pharmaceutical Care Records)の主観記述(Subjectiveセクション)を対象に,自然言語処理(NLP)技術を用いて,患者が報告する症状を高精度で抽出するモデルの開発と検証を行いました.
まず,2種類のアノテーションガイドラインに基づき精緻な正解データを作成し,最新のトランスフォーマーモデル(BERT)と条件付き確率場(CRF)を組み合わせたNamed Entity Recognition(NER)モデルを構築しました.このモデルは,既存の日本語臨床テキスト用ツールと比較して大幅に性能が向上し,薬局記録におけるF1スコアは0.8を超えました.さらに,外部検証として患者ブログデータを用いたところ,身体症状の98%以上を正確に抽出し,既存ツールに比べて20%の精度向上を示しました.
これらの結果は,患者特有の表現や口語的な語りを正確に捉えるには,患者視点に最適化されたモデルの開発が重要であることを示しています.本研究は,今後の医療現場における患者中心の意思決定支援や個別化医療の推進に資する基盤的知見を提供するものです.

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